肥満で本当に後悔すること
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「もう少し痩せた方がいいのは分かっている」
「いつか本気でダイエットしよう」
「今はまだ、特に身体の不調もないから大丈夫」
もし、そんなふうに考えているなら、今日は少しだけ真剣に考えてみてほしいことがあります。
肥満で本当に後悔するのは、好きな服が着られないことでも、鏡を見て落ち込むことでもありません。
自分の身体が、気づかないうちに取り返しのつかない状態へ近づいていたと知ることです。
■ 気づいたときには、病気が進んでいることがある
肥満は、単に体重が重いというだけの問題ではありません。
特に内臓脂肪が蓄積すると、血糖値や血圧、血液中の脂質に異常が起こりやすくなり、糖尿病や動脈硬化などのリスクが高まります。
そして、恐ろしいのは、こうした変化があっても、初めのうちは自覚症状がほとんどない場合があることです。
「普通に生活できているから大丈夫」
「痛いところもないし、まだ病気ではないだろう」
そう思っている間にも、身体の中では変化が進んでいる可能性があります。
肥満が関係する健康障害には、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、心臓病、脳卒中、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群、膝や腰などの関節の病気、腎臓の病気などがあります。
もちろん、太っている人が必ずこれらの病気になるわけではありません。しかし、リスクが高まることは知っておいてほしいのです。
■ 糖尿病から人工透析へ。そんな未来も現実にある
特に知っておいてほしいのが、糖尿病と腎臓の関係です。
糖尿病は、血液中の糖が多い状態が続く病気です。適切な治療を受けずに進行すると、全身の血管に影響を及ぼし、目や神経、腎臓などに重大な合併症を引き起こすことがあります。
その一つが、糖尿病性腎症です。
腎臓は、血液から老廃物や余分な水分を取り除き、尿として排出する重要な役割を担っています。
ところが、腎臓の機能が大きく低下すると、身体の中に老廃物や水分が蓄積し、自分の腎臓だけでは十分に身体を維持できなくなることがあります。
その結果、必要になる場合があるのが人工透析です。
透析が必要になると、定期的に医療機関などで治療を受け、身体にたまった老廃物や余分な水分を取り除かなければなりません。
仕事、旅行、家族との時間、日々の予定。これまで当たり前にできていたことも、治療の時間や体調を考慮して計画する必要が出てくる場合があります。
もちろん、透析を受けながら仕事や旅行を楽しんでいる方もいます。透析になったから人生が終わるわけではありません。
それでも、本来なら避けられたかもしれない病気の進行によって、生活に大きな制約が生まれる可能性があるという現実は、知っておくべきだと思います。
そして、糖尿病だけが腎臓を悪くするわけではありません。高血圧や肥満なども、腎機能低下に関係します。
「まだ症状がないから」と放置せず、健診で血糖値や血圧、尿たんぱく、腎機能などを確認することが大切です。
■ 突然、命や身体の自由を失う可能性もある
肥満に伴って高血圧や糖尿病、脂質異常症などが重なると、動脈硬化が進みやすくなります。
その先にあるのが、心筋梗塞や脳卒中です。
心筋梗塞では、心臓に血液を送る血管が詰まり、心臓の筋肉が深刻なダメージを受けることがあります。命に関わる緊急事態です。
脳卒中では、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、命が助かっても、手足の麻痺や言葉の障害などが残ることがあります。
昨日まで自分の足で歩き、普通に会話し、仕事や家事をこなしていた人が、突然、誰かの助けを必要とする生活になる。
そうした事態は、決して他人事ではありません。
肥満だけが直接の原因になるわけではなく、年齢や遺伝、喫煙、血圧、血糖値など、さまざまな要因が関係します。
それでも、改善できる危険因子を放置しないことには、大きな意味があります。
■ 病気にならなくても、身体の自由は少しずつ失われる
ここまで重大な病気についてお話ししましたが、後悔につながるのは、命に関わる病気だけではありません。
体重が増え、筋力や活動量が低下すると、膝や腰に負担がかかりやすくなります。
階段を上るのがつらい。
少し歩いただけで疲れる。
旅行先で家族と同じ距離を歩けない。
外出すること自体がおっくうになる。
そんな小さな変化が積み重なると、行動範囲が狭くなり、さらに身体を動かす機会が減ってしまうことがあります。
また、睡眠時無呼吸症候群によって睡眠の質が低下し、日中の強い眠気や疲労感につながることもあります。
本当は行きたい場所がある。
やってみたいことがある。
家族と一緒に楽しみたいことがある。
それなのに、身体の状態が理由で諦めることが増えていく。
私は、こうした未来も、肥満について真剣に考えてほしい理由の一つだと思っています。
■ 病気になってから後悔しないために
ここまで読むと、怖く感じた方もいるかもしれません。
ただ、私がお伝えしたいのは、恐怖を感じて無理なダイエットを始めてほしいということではありません。
極端な食事制限や、体重だけを追いかける無理な方法は必要ありません。
大切なのは、今の身体の状態を知り、できることから少しずつ変えていくことです。
食事の内容を見直す。
日常の活動量を増やす。
必要な筋肉を維持する。
睡眠や生活習慣を整える。
健診の結果に目を向ける。
そして、すでに血糖値や血圧、腎機能などに異常がある場合は、医療機関で適切な評価や治療を受けることも欠かせません。
体重を少し減らすだけでも、血糖値や血圧などの改善につながる場合があります。大きな目標を一度に達成しようとする必要はありません。
今から始めることには、未来の自分を守る意味があります。
■ 10年後も、自分の足で歩き、好きなことを楽しむために
私が目指してほしいのは、ただ体重計の数字が減ることではありません。
10年後も、自分の足で歩けること。
家族と出かけられること。
好きなものを楽しみながら、健康を大切にできること。
自分の身体のことを理由に、やりたいことを諦めずに済むこと。
そんな未来です。
「まだ大丈夫」と思っている今だからこそ、一度、自分の身体と向き合ってみてください。
毎年体重が増えている。
以前より疲れやすくなった。
運動する機会が減った。
健診で血糖値や血圧を指摘されたことがある。
もし心当たりがあるなら、何年も先送りにするのではなく、今できることから始めてみませんか。
当院では、体重の数字だけでなく、身体の動かしやすさや筋肉、日々の食事・栄養、生活習慣も含めて、これからの健康づくりを一緒に考えています。
本当に後悔してほしくないのは、痩せなかったことではありません。
自分の身体を大切にする機会があったのに、「まだ大丈夫」と先送りにしてしまったことです。
未来の自分のために、今日から一歩を踏み出してみませんか。








